《幕間》
キア・レッドグレイヴ:とあるマンションの屋上。
その場に電灯はなく、まわりのビルの窓から漏れる照明が、そこにひとりたたずむ影を浮き上がらせていた。
「夜はやっぱりいいよねえ。すごく体に馴染む」
人の気配に反応して振り向いた彼は、普段着のパーカーに細身のジーンズ姿だったけれど、なぜかいつもよりもほんの少しだけ大人びて見える。
「サラ、準備はいい?」
暗闇の中で彼の瞳が一瞬赤くきらめいた。
サラ・ジェファーソン:傍にいた私は頷いて笑み返す。
「いつだってあなたを輝かせる準備はできてるわ。」
彼のステージが花園になるだけだ。それなら彼を輝かせるスタッフにしてマネージャーの私はいつだってOKに決まってる。
「最高に綺麗よ、キア。今日のパフォーマンスも決めてやりましょう」
キア・レッドグレイヴ:「たのもしいな」サラににこりと微笑むと、暗い夜空に向かってすっと右手を伸ばす。
「答えよ。我が昏き血脈。侵略者に魂の輝きを奪わせはしない」彼の両目が暗闇に輝き、髪が何かにあおられるようになびく。
「僕を応援してくれる人たちの想いをかなえるために。そして君と世界をつかむために。イグニッション・シークエンス・スタート!」
サラ・ジェファーソン:サラは彼を支えるように歩を進め、並び立つ。そしてデュエットのように朗々とつづけた。
「世界は私たちを待っている。 バーニングアップ、システム・アクティベート!」
サラの言葉とともに、キアの髪が一層豊かになびいた。サラの体は光の粒子になりキアを包む。
キア・レッドグレイヴ:光の粒子が消えた後に、紫色の軍服めいたきらびやかな衣装に身を包んだキアが立っていた。腰に刺したサーベルの黄金色の柄に手をかけてキアは宣言する。
「行くよ、サラ!世界の輝きは僕のもの、そしてみんなのものだ!」
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アリアナ・ローレンス:夜の温室はしっとりとむせかえるような花の香りに満ちていた。人の気配はふたつ。花々の真ん中でそっと向き合う。
「ラウ、夢の中で淡い緑のアイリスが歪に咲いているのが見えたわ」そしてひどい悲しみと怒りを感じた。
「きっと強敵だと思う。それでも、わたしは行くね」
じっとフラーウムを見つめてから、花の香りを胸いっぱいに吸い込むように深呼吸した。
フラーウム・アルブス:「ああ……かつて同じように堕ちたものとして、そこにある歪な感情を断ち切って、自分を取り戻させよう」
そうしなければ、彼らは間違いに気づかず世界を滅ぼしてしまう。フラーウムはアリアナに手を差し伸べた。
アリアナ・ローレンス:「きっと、頭ごなしに言っても通じないし、戦って負かさないとロアテラの影響からは脱することもままならない。私の剣が断ち切るのは命でも望みでもなく、歪な檻だと思うから」
強い瞳で笑って彼の手を取り「望むものがある限り、世界に光を!」
晴れやかに唱えた。
フラーウム・アルブス:「望むものがある限り、世界に光を!」
アリアナに続くように唱えると。フラーウムの身体が光の粒子となってアリアナを包み込むように降り注いだ。
アリアナ・ローレンス:降り注ぐ光の粒子は鈍色の鎖帷子、板金の小手と足鎧、濃い灰色のマントに変わっていく。
腰には柄に琥珀の嵌まった大剣、手には白い蝶のような仮面を持ってアリアナは叫ぶ。
「ラウ、行こう。そして、またここへ戻ってこようね。命のきらめき、その光は灯し続けなきゃ!」
仮面をそっと顔に当てると、機械仕掛けのそれはアリアナの顔を覆った。その瞬間、突如として温室に吹き込んだ風に花々が揺れ、花の揺れが収まったころにはアリアナの姿は空気に溶け込むように消えていた。
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八ツ橋久夏:開け放しておいた窓に月の光がさしこむと、そこにいつも手紙を運んでくれる妖精たちがいた。
彼らに手を差し伸べると辺りを光が包む。やがてその光が止み、目を開くとそこには久しぶりに見る先生がいた。
数ヶ月前の戦いのときよりもどこかやつれたような表情をしていて心がしめつけられてしまうと同時に先生を自由にしたいという思いもまた胸を満たす。
……世界を滅ぼしてしまえば、それは叶うのだ。「先生、おひさしぶりです」
如月桧斗: 「久夏、無事か?」とりあえず元気そうではあるので、少し安心する。
「いけるか?」俺たちの、そして世界の命運をかけた戦場へ。
八ツ橋久夏:「とりあえずは無事です。……行きましょう、あの場所へ」
と笑って、先生のもとへと近寄るとぎゅっと抱きしめるようにしがみつく。「自由の景色は虹色の光に満ちて!」
如月桧斗: 久夏の言葉に柔らかく微笑を返し、彼女の存在を確かめるようにその小さな背に片腕を回す。
彼女の髪に顔を一瞬埋め、そして決然と言葉を放つ。
「悪しき世界はその光の裡に滅せよ!」
すぐさま彼の体の輪郭は溶け去り、代わりに光の粒子が久夏の体を包んだ。
八ツ橋久夏:その粒子は久夏にシトラの制服をワンピースドレスのようにアレンジしたものの上に薄く軽い鎧のようにピナフォアを纏わせ、手には持ち手の長いモーニングスターを与えた。
「……世界を、わたしを、そして先生をしがらみの鎖から解き放つために」そう呟いて、久夏は戦いの場へと歩きだす。
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